支部長コラム其の7「AIを恐れるな!むしろ上手く使って楽して儲けろ!」

暑うございます。全シ連東北支部長の坂本タクマです。

今回のテーマは、AIについてです。

またか、とお思いでしょう。しかし、この頃またそっち方面でいろいろ動きが出て、どうにもほっておくことができないのです。


将棋界に吹き荒れるAI旋風

まずは、将棋界のお話しから。

将棋界がこの1年足らずの間に経験した乱高下は、もの凄いものでした。三浦弘行九段の対局中のソフト使用疑惑があってドン底に落ちた後、「シロ」という調査結果が出て三浦九段の名誉は回復されたものの、ここからどうやって将棋界が這い上がるんだと思っていたら、天才中学生棋士・藤井聡太四段が現れていきなり29連勝の大記録、一挙に史上最高値へと引っ張り上げたのでした。かれこれ40年ほど将棋ファンをやっていますが、これほどの激動は見たことがありません。

このふたつの「事件」は、つながっています。どちらもAI絡みです。三浦九段は、対局中にソフトに指し手を教わったと疑われたせいでひどい目にあいました。一方、藤井四段は、研究・勉強のためにソフトを使用して、力を伸ばしたと言われています。将棋界では、AIを対局中に使うのはダメで、研究に使うのはよし、ということです。そこには天と地ほどの差があります。

ここで、もう一人の登場人物、千田翔太六段についてお話しします。藤井四段の連勝中にワイドショーなどで大量の将棋情報が流される中、ほとんど触れられることがなかった人ですが、千田六段こそが、今の将棋界のキーパーソンだと思っています。千田六段は、強くなるための修行のすべてを、コンピューター将棋ソフトで行っているそうです。もはや人間同士の棋譜は一切並べず、AI同士の対戦を研究しているらしいのです。ある局面をAIがどう評価するか瞬時に判断する、という訓練も行っているそうです。こうしたコンピューターによる学習法を確立し、世の中に広めたいとも公言しています。成果は着実に現れていて、タイトル戦の挑戦者にもなりました。2016年度の最多勝・最多対局数に輝いています。

この千田六段の勧めで、藤井四段はソフトを使いはじめたのです。1年ほど前のことです。もうすでにソフトが人間を越えていることは明らかでしたから、これは自然な流れだと思います。そのほかにも多くの棋士が、ソフトを取り入れていると聞きます。佐藤天彦名人は、名人戦と平行して行われたAIとの勝負に敗れましたが、その過程で触れたAIの積極的な差し回しを取り入れて、逆転で名人防衛を果たしました。

つまり、この1年足らずの間に、AIは将棋界にとっての敵から味方へと、大きく変わったのでした。傍から見ている限りでは、そんなふうに映りました。どっちにしろ無視できない存在であることは間違いありません。

もはや、AIが敵か味方か議論している場合ではありません。味方につけないとヤバいんじゃないかと思います。それは我々の携わる相場の世界でもそうです。将棋界ほどはっきりした波はまだ来ていませんが、手をこまねいていれば、いずれはザップーンと飲み込まれてしまう予感がします。

 

今からできるAI投資

それでは、どうやってAIを味方につければよいのでしょうか。

実は、すでにいくつかの道があります。
 
 
(1)自分でAIトレーダーを鍛える
(2)ロボアドバイザーを使う
(3)AIが運用する投信を買う
(4)AI関連株、またはAI関連株に投資する投信を買う

 
 
こういったところです。

将棋界と違って、AIから場中にアドバイスを受けるのもアリ、なんならAIがダイレクトな形で相場に参加するのもアリなので、選択肢はより多いとも言えます。

システムトレーダーとして一番興味があるのは、(1)の「自分でAIトレーダーを鍛える」というものです。これはなかなかハードルの高い道です。株価データを使って売買ルールを検証すること自体は手軽にできる時代にはなっていますが、ディープラーニングまでやろうとすると大変です。逆に、そこにこそ優位性が潜んでいる可能性もある気がします。

(2)のロボアドバイザーというのは、ネットを介していくつかの質問に答えれば、AIが運用方法を決めてくれるというものです。従来は人間が行っていた投資助言をAIにやらせることで、コストの大幅な低減が図れるもののようです。何か投資をしたいがどうやっていいかわからない、という人の選択肢としては有力ではないでしょうか。

(3)のようにAIが運用して絶対リターンを狙う、という投信も出てきています。世の中にあふれる大量の情報によって、相場の先行きを予想する、というようなものらしいです。運用成績はAIの性能次第ということでしょうか。これで儲かるのならば、こんなに楽なことはありません。

それから、(4)に挙げたようにAI関連株、AIが注目されることによって上がりそうな株に投資する、というコンセプトの投信もあります。そのときどきのホットな材料に投資するという、よくあるやつです。運用者によって成績は大きく変わってきましょうから、見極めが肝心です。目が利くなら、自分で銘柄選択して投資するほうがよいかも知れません。

これらのうち、一体どれをやればいいのでしょう。自分でAIを動かせるのが理想ですが、大変そうです。簡単に株価データでディープラーニングができるようなソフトが出てきたら状況は一変しそうですが。AIを「楽をする手段」と捉えるならロボアドバイザーはよさそうです。もし完璧な右肩上がりカーブを描くAIトレーダーファンドがあったらぜひ買いたいと思います。AI関連株は・・・・個人的にはあまりアテにしません。

何かと中途半端な状況で、いまいち実行に踏み切れない部分はあります。けれども、情報収集くらいは始めておいたほうがよさそうです。

 

デジタルとアナログ、苦と楽の狭間で

情報収集といえば、今回のコラムを書くのに使った情報の多くは、新聞の切り抜きから得たものです。AIとかビックデータに関する記事を今年の年初から集め始めました。全国紙と地方紙の2紙ぶん、半年間の収集で、A4のノート3冊になりました。なかなかの量です。

大変な作業です。溜めてしまってまとめてやるときには、背中がパンパンになります。ちょっと痩せたと思います。なぜ、私は、最新のデジタル方面の情報を、かくもアナログな方法で掻き集めているのでしょうか。
 
 
こういう話があります。藤井四段の師匠、杉本昌隆七段は、藤井四段に、「いきなりソフトを使うという楽をしないで、もうちょっと強くなってから使ったほうがいいんじゃないか」とアドバイスしたそうです。

私が学生時代、漫画サークルの先輩に「最初からスクリーントーンを使うという楽をしないで、表現力を磨け」と指導されました。今だったら、いきなりパソコンで描かないで、紙と鉛筆でみっちり描き込め、というところでしょうか。

あるCGソフトをの使い方を本で勉強したときに、「最初からマクロを使って楽をしないで、手作業でやって感覚を身につけたほうがよい」という文章に出会いました。

株をはじめたころ、「最初のうちはチャートソフトなど使わないで、手描きでチャートを描いて相場感覚を体にしみこませたほうがいい」と言っているサイトを目にしました。

こういう話はまだまだたくさんあって、とても数えきれません。みなさん、私が何を言いたいかおわかりでしょうか。
 
 
「いやいや、楽して何が悪い?つーか、別に楽してねーし」
 
 
これです。

スクリーントーンの使い方にも特有の技術があり、それらは使ってみなければ身につきません。トーンを張らなくていいなんて、むしろそんなに楽なことはありません。杉本七段も、「ああは言ったものの、もっとはやくからソフトを使わせたほうがよかったのかも・・・」とテレビでおっしゃっていました。そしたら50連勝してたかも知れないじゃないですか。

あーもう切り抜きなんてやめたい!めんどくさい!!ロボットにやらせたい!!AIに勝手に学習させて勝手にトレードさせたい!!楽がしたい!!楽して、楽して楽して儲けたい!!!
 
 
言いたいことを言ってしまったところで、今回はこれで終わります。